突然ですが、実はこの2年間「弁理士」という資格試験にチャレンジしていました。
紆余曲折ありましたが、なんとか合格することができたので記憶が新しいうちに色々と文字に残しておこうと思い、2年ぶりにブログを復活させてみます。
1,弁理士ってなに?
弁理士とは知的財産権に関する業務を行う国家資格者のことをいいます。
建築にからむところだと、特許権や意匠権を取得したい場合にその手続きの代理をお願いする相手が弁理士となります。
実際のところ、弁理士の業務は上記のような手続きの代理だけに留まらず、知的財産権を侵害しないための予防調査や、侵害行為があった場合の対応、知的財産を活用するためのコンサルティングなど多岐に渡ります。
2,なんで受験したの?
令和元年の意匠法改正により建築物のデザインが意匠法の保護対象に追加されたことで建築デザインに新しい角度から価値を見出すことができるのではないかと考えたというのが1番の理由です。
これまで建築物のデザインは高度な意匠性を有する場合のみ著作権法で保護されるのみでした。
(いわゆる、有名建築家がデザインして雑誌にも載るような建物をイメージして頂ければと思います。)
しかし、世の中に存在する建築物の大半は私のような名もなき建築士たちによってデザインされたものです。
建築デザインに関わる方なら分かっていただけると思いますが、そんな名もなき建築士も日々考えに考え抜いて建物の設計をしています。
寸法一つとっても、どうすればより美しく機能的なディテールを実現できるか議論と熟慮を重ねた上で決めています。
もちろん、そういったデザインの価値を理解してくださる方々もおられますが、そのようなプロセスを経て生み出されたデザインであってもこれまでその価値はほぼ認められていないと言っても過言ではありませんでした。
私は以前から「デザインの価値を高めたい」「デザインに対してちゃんと対価が支払われることが当たり前となってほしい」という気持ちを持っていたので、この法改正をきっかけに自分の想いをなにかしら形にできるのではないかと思い、チャレンジすることを決めました。
3,どんな試験なの?
試験では特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、各種条約に関する幅広い知識を問われます。
一部では理系最難関資格とも言われ、2023年度の合格率は約6%程度でした。
試験は大きく分けて合計3段階あります。
1次試験は短答式試験(マークシート)
2次試験は論文式試験(筆記試験)
3次試験は口述試験(口頭試問)
全ての試験について合格基準を満たさないと最終合格することはできません。
4,受けてみてどうだった?
試験を終えた後の素直な感想ですが、一級建築士試験よりはるかにしんどかったです。
短答試験は建築士試験の学科と同じようなイメージですが、学習すべき法域が多岐にわたる上に門外漢にとっては全て初めて触れる知識ばかりなのでかなりの負担です。
また、建築士試験では法規については法文集の参照ができますが、弁理士の短答試験では見ることは許されません。
建築士試験の時も法規が1番苦手だったのになんで法律資格にチャレンジしたのか、今思うとかなり謎です…
なんとか短答試験をクリアした次に待ち受けているのが論文試験です。
知的財産権法に係る手続きの方法や侵害行為への対応方法を文章で回答する試験です。
特許法(実用新案法を含む。以下同じ。)は2時間でA4用紙6~8枚程度、意匠法と商標法は1.5時間でA4用紙4枚ほどを「手書き」で埋める必要があります。
弁理士試験1番の山場と言われているだけあり、めちゃめちゃハードな試験です。
ちなみに私は本試験後に思いっきり腱鞘炎になりました。(一級建築士の製図試験でもならなかったのに…)
論文試験を突破したら最後に口述試験に挑みます。
試験官と対面で行う試験で特許法、意匠法、商標法の3科目について口頭でさまざまな試問がなされます。
問われた内容については全て正答する必要があり、1問でも答えられないとその科目は不合格となります。
不合格科目が2つ以上あると口述試験全体として不合格という扱いになります。
口述試験は合格率は高い試験ですが、日常的に人前で喋る経験をしていない受験生も多いので、苦戦する方も多いです。
5,合格して思うこと
とにもかくにもしんどかったという感想です。
法律知識ゼロからのスタートだったので最初は法文を読むことさえままならないような状況でした。
別に会社から求められているわけでもなく、必要に駆られての受験でもないので、途中幾度となく心が折れかけました。
しかしなんとか最終合格まで漕ぎ着けて、これまでに得てきた知識や、この受験勉強を通じて知り合った新しい友人、今まで知らなかった世界が開けたことは何にも代え難いものだったと考えています。
6,勉強の仕方など
せっかくなので弁理士試験についても勉強の仕方などまとめていこうと思います。
ちょっと長くなるので別の記事で更新します。