口述試験についてまとめてみたいと思います。
口述試験はそもそもの受験者数が非常に少ないため(毎年200名弱)、正確な情報を得るのが困難な試験でもあります。
というわけで、今後口述試験を受験される方の何かの足しになれば…という気持ちで書いていきます。
1,はじめに
まず、今年この試験を受けた素直な感想ですが、普通にめっちゃ難しいです。(簡単という人もいますがその理由は後述)
え、なんでこの試験の合格率が90%超えてるの??ってなりました。
論文試験後に自主ゼミを組んで口述対策をしてましたが、やはり論文試験を突破してきた人達って普通じゃないです。
みなさん知識豊富で半端なく優秀ですし、目標に向かって努力をすることを惜しまない人達の集まりです。
そういう人たちがほぼ全員全力で対策してきても1割落ちる試験だと思って臨んだ方が良いです。
模擬試験や会派の練習会で実践訓練を積むことはできますが、やはり本試験の緊張感はすごかったです。
試験官の方の厳しさも、本試験が1番だったと思いました。(次点はLECの模試)
2,日程のこと
近年の口述試験は2日間にわけて実施されます。
両日とも午前、午後で実施されるので、計4グループに分かれるイメージです。
グループ分けの基準は定かではありませんが、遠方の方は2日目の午後に割り当てられるケースが多いように感じました。
これはもう仕方のないことではあるのですが、このグループ分け次第で有利不利が生じます。
当然、1日目と2日目の問題は異なるので、1日目に何が出たかによって2日目はある程度のヤマ張りが可能ですし、問題の難易度にもばらつきはあります。
私が受験した時は、1日目が終わった時点でXのタイムライン上は阿鼻叫喚。
特実で時間切れとなる受験生が続出という状態でした。
しかし、受験生仲間に聞いたところ、2日目の問題は易しかったようで、Xのタイムライン上でも「ダメだった…」と呟いている受験生は皆無でした。
また、もちろん試験なので採点基準はあると思われますが、試験官の先生も人間ですので、採点に多少のバラつきはあるように感じます。
まぁこれくらいでいいか…と判断してくれる方もいれば、いやこのキーワードがでなければダメだ!と判断する方もおられます。
上記の内容を鑑みると、けっこう運要素が強い試験かも…というのが正直な感想です。
私も、1日目の午前だけは避けたい…と思っていましたが、バッチリその日程を指定されてかなり気が重かったです。
しかも当日は10年以上出題の無かった国際特許出願からの出題で非常に焦りました。
(1日目の午前組の唯一のメリットは「早く試験から解放される」というところ。)
とはいえ、遠方の受験者の方はそれだけでかなりの負担を強いられていますし(当然、会派の練習会などに参加するのも難しい)、年度によっては二日目の方が問題が難しいケースもありますので、そこはバランスだなと思います。
日程は自分の力ではどうすることもできない要素なので、ここは諦めてどんな日程に当たっても、どんな問題が出ても大丈夫なように対策しておくしかありません。
3,勉強の仕方
口述試験の勉強はとにもかくにもアウトプット練習が重要です。
みなさんがおっしゃっていることですが、頭で理解していることを口に出して表現できるようになるためにはある程度訓練が必要です。
論文試験は自己採点が困難な試験なので、論文試験直後から気持ちを切り替えて口述の勉強を始めることはとても難しいです。
しかし、できる限り早く対策を始めれば、その分後が楽になります。
論文試験の結果は蓋を開けるまでわかりません。
「落ちたかも…」と思ってネガティブに過ごすよりも、「受かってる!」と信じてポジティブに次の試験対策を進めた方がメンタル的にも良いです。
私は論文の時から一緒に勉強していた受験仲間の自主ゼミに参加させていただいて論文試験の1ヶ月後くらいからLINEのグループ通話を利用して練習してました。
もちろん、最初は全然答えられませんでしたが地道に練習を続けて、論文合格発表の段階で過去問10年分はほぼ問題なく回答できるような状況でした。
論文合格発表後からは会派の練習会や模試がたくさん実施されるので、過去問の知識を基礎に応用的な内容を残り3週間で詰め込んでいくイメージです。
このようなスケジュールで進められれば、あまり無理することなく合格レベルまで仕上げていくことが可能だと思います。
ちなみに、私が口述試験対策のために使用した教材、受講した講座は以下のとおりです。
①口述アドヴァンステキスト
②宮口聡の口述最後の悪あがき道場
③LEC口述模擬試験(想定問答集もやりこみ)
④TAC口述模擬試験
⑤会派の練習会(2回)
4,回答方法のコツ
口述試験の回答方法には明確なコツがあります。
それは「問われた内容に即して、必要最低限のことしか言わない」ということです。
弁理士試験の受験生で、論文試験も突破されている方であれば半端じゃない知識がおありだと思います。
試験官から試問をされると、どうしても自分が持ってる知識をしっかりと表現したいと思ってしまいます(利用の定義を学習机事件でバシッと決めたい…!とか。ちなみに私もそういうタイプです)。
しかし、それはこの試験で求められてはいません(もちろん、それを問われれば正確に答える必要はありますが…)。
口述本試験では極度の緊張状態に置かれます。そんな中で高度なことをやろうとすると、よほど言い慣れたことじゃないと言葉に詰まってしまいます。
言葉に詰まったりしどろもどろになると、当然試験官の先生は「この人大丈夫かな…?」という目で見るようになります。
時間をロスすることになり、試験官の目も厳しくなる。
メリットがありません。
あとは理由を聞かれていないのに理由から回答を始めてしまい、結論が不明確になる、というパターンもよくあります。
「〇〇できますか?」
と問われたら
「〇〇できます or できません」
で十分です。
もしそれで回答として不十分であれば追加の試問がなされるだけです。
なぜコンパクトな回答とすべきかというと、口述試験は思っている以上に時間が無いからです。
試験時間はわずか10分です。
10分間で全ての問題に正答しなければ合格点はつきません。
そんな厳しい条件の中で、長々理由から述べてもそれが間違っていたらその時間は丸々無駄になります。
もしかしたら試験官は「別に理由までは求めて無かったのに、受験生が喋り出したから困ったなぁ…」と思っているかもしれません。
1分を争う試験でそんな悲劇が起きてしまうと誰も幸せになりません。
必要最低限の短い回答で、試験官の方とたくさん対話をする。
これがより早く正答に辿り着くコツだと思います。
あと、できる限り法文集を開かずに回答できると時間がかなり節約できます。
私は本試験は3科目とも1回目のベルがなった時点で全ての回答が終わっていましたが、各科目とも法文集を開いたのは1回くらいでした。
無理する必要は無いですが、たとえば特許権の効力であったり、意匠の類否判断の条文など有名どころは誦じれても良いかもしれません。
5,知らない知識を問われたら
これは口述試験永遠のテーマの1つだと思います。
知らない知識は無い!…という状態で臨むのがベストですが現実問題そういうわけにもいきません。
青本は国語辞典より分厚いですし、審査基準や審判便覧、判例までおさえるのは無理です。
そんな中で、聞いたこともないような趣旨を問われたら…
想像しただけでも恐ろしいですよね…
でも、これまで必死に勉強してきた自分が知らない趣旨は他の受験生も知りません。
なので、純粋に知識を聞かれているのではなく、そんな状況をどう乗り切るかを問われていると思った方が良いです。
例えば、私が受験した時は10年以上出題の無かった国際特許出願について出題され、PCT34条補正ができる理由が問われました。
完全にノーマークの部分からの出題でした。
そもそもその制度がどんな制度なのか、その制度のメリットはなんなのか、そういうことを意識しながら自分なりの回答をすれば、たとえ正確な答えでは無かったとしても良しと判断してもらえる可能性はあります。
とにかく諦めずに試験官の方と対話することが重要です。
6,さいごに
長々と書いてきましたが、口述試験は落とすための試験では無いです。
最後の最後に結局それかい!となるかもしれませんが、それは本当にそうだと思います。
試験官の方はあの手この手で助け舟を出してくださいますし、合否の基準は「全ての問題に正答できたか否か」の一点のみです。
つまり、理論的には合格率100%もありえる試験です。
ただ、難易度は高い試験であることには間違いはないので、とにかく油断せずに早めの対策を心掛けるのが肝要と思います。